
令和4年に国内で生まれた赤ちゃんの数が初めて80万人を割り、予想を超えるペースで少子化が進む現状に改めて衝撃を覚えた人は多い。子供関連ビジネスは少子化を背景に衰退の一途をたどってもおかしくないが、意外にも堅調に推移している。産み育てやすい社会づくりの実現に向けた政府の子供予算倍増議論にも注目が集まっており、現代の子育て事情をとらえた商品・サービスを強化する企業は増えている。
10年間右肩上がりの成長
「異次元の少子化対策に挑戦する」。岸田文雄首相がこう訴えたのは、今年1月の年頭記者会見のことだ。財源確保の課題は残るが、少子化対策は待ったなしの状況にあることは事実。児童手当の拡充や育児休業給付金の引き上げ、出産費用の保険適用などがたたき台として示されている。そんな子供関連政策の司令塔として、4月には政府肝いりで「こども家庭庁」も新設された。
厚生労働省が2月に公表した人口動態統計によると、外国人と海外で生まれた日本人を含む令和4年の出生数(速報値)は前年比5・1%減の79万9728人。80万人を下回ったのは統計を開始した明治32年以来、初めてのことだ。新型コロナウイルス禍による婚姻数の減少もこの動きに拍車をかけている。
子供が減れば当然、その関連ビジネスも縮小すると思われるが、急激に進む少子化の一方で市場は堅調だ。民間調査会社の矢野経済研究所(東京)が2月に公表した令和3年のベビー用品・関連サービス市場は前年比0・9%増の4兆3513億円。調査では「出生数減少の進行やそのペースの加速に伴う需要層の減少によって長期的な漸減トレンドにある」と厳しい見方も示すが、ここ10年は右肩上がりの成長を続けており、5年は4兆4268億円とわずかだが伸長を予測している。