「またゴールポスト動く可能性は覚悟」宮家邦彦氏

宮家邦彦氏(恵守乾撮影)

7日の日韓首脳会談について、キヤノングローバル戦略研究所の宮家邦彦研究主幹は、現下の安全保障環境を踏まえ日韓が連携を深めることを評価しつつ、韓国側が従来のように対日姿勢を変える危険性も指摘した。

日韓首脳によるシャトル外交が再開した。両国間には依然とレーダー照射問題や東京電力福島第1原発の処理水海洋放出などの懸案は残っているが、それらの解決を急ぐよりも、安全保障面の協力を優先したのだろう。岸田文雄首相も歴史認識については新たな謝罪をせず、従来の立場を維持したことは評価できる。

北朝鮮による核・ミサイル開発など現状の安全保障環境を考えれば、日韓両国にとっては正しい方向に進んでいる。韓国の中国に対する見方が現実的になってきている。ロシアによるウクライナ侵略によって中国の脅威が現実味を帯びる中、尹錫悦政権が米国との関係を重視し、日韓関係を改善しないといけないと分かってきた。短期的なものかもしれないが関係が正常化することを期待したい。

一方、これで日韓関係が全て円満に解決するということではない。日韓関係は90%が内政問題だ。特に韓国国内の主な左派勢力は50代で、あと20年は現役だ。また、文在寅政権のような政権が誕生する可能性は十分ある。そうすれば、日韓間で約束したものをほごにし、ゴールポストが動かされるという事態が繰り返されることは覚悟しなければならない。

ただ、これから韓国国内でも世代交代が起きる。将来的に空想的な反米や親北朝鮮ではない現実的な若者が育っているはずだ。今、こうした現実的な日韓関係を築くという布石を打つことは意義があると考えている。(聞き手 広池慶一)