
厚生労働省は、新型コロナウイルスの新規感染者数が緩やかに増加していることも踏まえ、感染症法上の位置づけが「5類」に引き下げられた後も、当面対応にあたる人員規模を維持する考えだ。政府は9月にも感染症対策の司令塔となる新組織も立ち上げる予定で、社会経済活動の再開と、次の感染の波や新しい感染症の発生に向けた備えを同時並行で進める。
厚労省幹部は、今夏に流行「第9波」が予想されることも念頭に「今後も気は抜けない」と強調する。同省では、病床確保やPCR検査などを調整する体制は当面縮小せず、高齢者ら重症化リスクの高い人を中心に、引き続き必要な感染対策を呼びかける考えだ。
一方、これまでの新型コロナ対応では、政府に司令塔となる組織がなく、効率的な対策ができなかったという苦い教訓を生んだ。
これを受け、政府は9月にも内閣官房に内閣感染症危機管理統括庁を発足させる。新型コロナ禍では医療人材やマスクなどの医療物資が不足したことを受け、平時から地方自治体や医療機関と連携し、物資の調達や必要な政策立案などを一元的に担う。
また、政府は今国会で、米疾病対策センター(CDC)をモデルとした専門家組織「日本版CDC」を令和7年度以降に新設するための法案も成立させる方針だ。同組織は国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合する形で発足し、疫学調査などに一体的に対応する。
新型コロナ対策を巡っては、発生から3年あまりの間に100兆円超の国費が投入された。巨額の病床確保料を受け取りながら医師の不在などを理由に患者受け入れを拒んだ例なども多い。今後は経済対策も含め、一連の効果の検証も課題となる。(村上智博)
高齢者施設の面会 リスクなお
有事から平時転換 対策、個人の判断に