首相、アフリカ歴訪で「法の支配」浸透へ手応え 支援に課題も

岸田文雄首相は5日、アフリカ4カ国とシンガポールの歴訪を終え、帰国した。各国首脳との会談では、19日から広島市で開幕する先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に向け、覇権主義を強める中国やロシアを念頭に、法の支配に基づく国際秩序を堅持の方針を共有。関係強化に一定の手応えを得た首相だが、多様な課題を抱えるアフリカ諸国への支援の難しさも浮かんだ。

「今日本に求められているのは、G7とグローバルサウスの橋渡しを行い、法の支配を貫徹することだ」

首相は4日午後(日本時間同)、アフリカ南部モザンビークの首都・マプトでの記者会見でこう訴えた。

首相のアフリカ歴訪の最大の狙いは法の支配を重視する理念の浸透だった。

米国のバイデン政権は、民主主義を旗印に中露との対抗軸を打ち出す。だが、アフリカには民主主義が成熟していない国も少なくない。欧米によるかつての植民地支配への反発もある。首相は「欧米の論理を振りかざせば、中露の側に押しやってしまうことになる」との持論に基づき、今回の外遊に臨んだ。

首相の訴える法の支配の重要性について各国首脳は「大国が小国を踏みにじるような世の中があってはならない」(ガーナのアクフォアド大統領)などと賛同。旧ソ連時代からロシアとの関係が深いモザンビークのニュシ大統領も異論を唱えなかった。

同時に、首相はアフリカに関わる宿題も託された。エジプトのシーシー大統領は「ウクライナ危機の影響で新型コロナウイルス以上の悪影響が出ている。食料やエネルギー価格が高騰している」と強調。ケニアのルト大統領は気候変動問題について「われわれの生活そのものに影響を及ぼしている」と訴えた。

首相は周囲に「個々の国が直面する課題に耳を傾け、真摯(しんし)に協力しなければ、(日本の)訴えも賛同を得難い」と語る。

広島サミットの成果として、どれだけアフリカ諸国に響く具体策を打ち出せるか、議長を務める首相の力量が問われている。(永原慎吾)