目次
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都道府県ごとの特徴は?
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各地の気になる上昇ポイント
「可視化」した地図を見てみると
「都道府県地価調査」は、毎年7月1日時点の全国の土地の価格を都道府県が調べるものです。
国土交通省は2万1300あまりの地点の結果をまとめ、20日、その全地点のデータを公表しました。
今回、NHKが地価の変化を「可視化」した地図がこちらです。

この日本地図、東京・大阪・福岡などの大都市部では「赤」の地域が、その他は「青」や「白」の地域が広がっています。
地図上の点は地価調査の地点です。
前の年と比べて地価が上昇した地点は「赤」、下落した地点は「青」で示しています。
「白」は変化なしです。
地価が上昇した「赤」の地点は全体の43.3%にあたる9246か所にのぼります。
都道府県ごとの特徴は?
地価が上がった地点の割合が大きい都道府県はどこなのか、まとめてみると…。

トップはやはり東京都。
率にして92%と、実に9割以上の地点で地価が上昇しています。

1288地点のうち、上昇したのは1185地点。
下落はわずか23地点です。
地図でも都内のほとんどの地点で地価が上昇したことがわかります。
次いで
▽沖縄県が87%、
▽神奈川県が80%、
▽愛知県が74.9%、
▽大阪府が74.7%などと、
大都市部を中心に割合が大きくなっています。
続いて、低い順に見ていきます。

最も割合が低かったのは愛媛県で、6.6%。

松山市など地方都市の中心部では上昇がみられますが、それ以外ではほとんどが下落、または変化なしとなっています。
続いて、
▽徳島県が7.6%、
▽高知県が8.8%と四国が続き、
▽山梨県が11.3%、
▽鳥取県が13.5%などとなっています。
各地の気になる上昇ポイント
果たして、地価が上昇したのは大都市部や地方都市の中心部だけなのでしょうか。
データを載せた地図を眺めると…。
「山あいなのに地価が上がっている?」
「離島で地価が上昇?」
ランキングだけではわからない、気になる変化が見つかりました。
※去年の地価の変化と、ことしの地価の変化を各地で見比べます。
北海道
地価上昇はさらに南へ


去年と同様、札幌市から千歳市にかけて広く住宅地の地価が上昇した北海道。
ことしはさらに南の、室蘭市、登別市、苫小牧市にかけて鉄道に沿うように地価が上昇した地域がありました。


場所によっては7%以上の上昇です。
(不動産鑑定士 齋藤武也さん)
「上昇している地点の多くは、生活の利便性が高いところ。苫小牧市で上がっているところは近くにショッピングモールがあり、非常に生活しやすい。特に千歳市に近い苫小牧市東部では先端半導体の国産化を目指す『Rapidus』が近いこともあり、今後も上昇傾向が続くのではないか」
災害からの復興も


続いて、千歳市の南東にある厚真町です。
ここでも住宅地の地価上昇がみられます。
厚真町では、2018年9月の胆振東部地震で最大震度7を観測し、土砂崩れによる住宅の倒壊など大きな被害に見舞われました。
地価も下落か横ばいが続いていましたが、ことし上昇に転じました。
厚真町京町では2.6%の上昇です。
(不動産鑑定士 齋藤武也さん)
「インフラの復旧工事がほぼ完了するなど、地震後の復興が進み、人が戻ってきている状況が価格に出ているのではないか。また具体的な動きにはなっていないものの、厚真町もRapidus進出への『期待感』が高まっており、今後それが価格に出てくるかどうか注目だ」
青森県
地方でも便利なエリアに人が集中
青森県の東部でも気になる変化がありました。


八戸市と三沢市の間に位置する、おいらせ町です。
住宅地は去年、ほとんどが変化なしか下落でしたが、ことしは広く上昇。
最大で5.9%の上昇です。
調査を担当した不動産鑑定士の森政浩さんは「おいらせ町ではこの数年、人口の流入が続いている」と指摘。
背景に利便性の高さと土地の安さがあると分析しています。
(不動産鑑定士 森政浩さん)
「周辺の三沢市や八戸市と比べまだ地価も安く、ショッピングモールもあって利便性も高いため、人が流入してきているとみている。また、おいらせ町では2021年に町の都市計画が変更され、住宅地の開発が活発になっていた。おいらせ町に限らず、青森市などの都市部近郊では地価が比較的安いところがまだあり、上昇は続くのではないか」
長野県
インバウンドは山あいの温泉地にも


長野県北部の山あいにある野沢温泉村では、商業地が8.5%の大幅な上昇を見せていました。
不動産鑑定士の大井邦弘さんは「これまでにない突出した上昇だ」とした上で、背景に外国資本の投資の動きがあると指摘します。
(不動産鑑定士 大井邦弘さん)
「2022年11月ごろからオーストラリアを中心とする外国資本の投資の動きが活発になっている。野沢温泉村は雪質が良いと海外でも有名で、観光客の回復を見越した外国資本による建物の改修やペンション開発などの動きも活発になっていて、取引の金額も非常に大きい」
京都府
金閣でも銀閣でもなく…


観光客の回復などを背景に中心部の地価が上昇した京都。
地図をよく見ると京都府北部で日本海に面した、人口約2000人の伊根町でも住宅地の地価が上昇していました。
周辺を見ると、この地点だけ上昇していることが分かります。
上昇率が4.5%のこの地点も、やはり「観光地」です。
(不動産鑑定士 村山健一さん)
「昔ながらの『舟屋』が楽しめる場所で、国内外の観光客に人気。大きな開発が行われているわけではないが、観光客が戻ってきていてそれ伴う上昇とみられる。今後、物価の高騰など不安要因はあるがまだ顕在化しておらず、当面は好調に推移するのではないか」
沖縄県
中心地はもう手が届かない?


去年と比較した全体の地価の平均が4.9%の上昇と、全国トップだった沖縄県。
上昇した地点は去年と比べて沖縄本島の北部にも広がり、上昇の幅も大きくなっています。
背景には、中心部での地価高騰がありました。
(不動産鑑定士 仲本徹さん)
「那覇の中心部では土地の値段が上がり、地元の業者が買えなくなってきている。そのため、周辺部の土地を買って建売住宅を販売する動きが活発で、島の北部や南部でも地価が上昇するエリアが広がったと見られる」
宮古島、石垣島だけじゃない 移住人気を背景に


こちらは、沖縄本島の西にある慶良間諸島です。
去年変化のなかった住宅地の4地点の地価は、ことしはすべてで上がり、最大で3.4%の上昇です。
(不動産鑑定士 仲本徹さん)
「もともと島内での取引が主だったが、近年は高い金額での島外との取引が増加するようになった。背景には観光の回復に加えて、移住希望者が増加していることも考えられる。宮古島や石垣島などと比べると取引の規模としては小さいが、これまであまり見られなかった動きだ」
地価上昇の広がりはどこまで
観光客の回復に海外資本、移住人気に、地方都市での価格高騰。
こうした要因を背景にした地価上昇の新たな広がりは継続するのか、今後の動きが注目されます。