
今年は十五夜「中秋の名月」を9月29日に迎える。中秋の名月と満月が一致する年で、ゆっくりと月見の準備をして、季節の移ろいを感じるのもいいかもしれない。
1年で最も美しい
中秋の名月は、1年で最も月が美しく見えるとされる秋の月を観賞しながら収穫を感謝するという意味がある。
中秋は、月の満ち欠けを基準につくられた旧暦の8月15日のことで、「中秋の名月」は同日に見られる月を表す。国立天文台などによると、ひと月は、新月から次の新月までの期間だったことから、15日が満月に近い月となる。ただ、満月までの日数にばらつき(13・9~15・6日)があることや、満月は太陽、地球、月の位置関係で決まるため、中秋の名月の日は必ずしも満月というわけではない。今年まで3年連続で中秋の名月と満月が重なったが、次は7年後の令和12年という。
日本で名月の日に月を見る習わしが始まったのは平安時代で、中国から伝わったとされる。当時は平安貴族の間では優雅な「観月の宴」が開かれていたが、その後、江戸時代に入り、農業の行事と結びつき「芋名月」などと呼ばれることもある。
だんご、すすき、芋などの収穫物などを供えるのは日本独自の風習だ。だんごは、月が満ちた姿を模して丸い形となっている。豊作への祈りや感謝のほか、物事の結実や幸福の象徴ともされ、供えた後の団子を食べることで健康と幸福を得られると考えられている。
日本独自の風習という面では、十五夜に次いで美しい月といわれ栗や豆の収穫祝いでもある「十三夜(じゅうさんや)」(10月27日)、稲刈りを終え田の神様を見送る行事「十日(とおかん)夜(や)」(11月22日)にも発展していった。
藩主も観賞の記録
中秋の名月の29日には、各地でさまざまなイベントが行われる。
群馬県甘楽町は、織田信長の次男である織田信雄が築庭したとされる国指定名勝の「楽山園」内の昆明池の周りに「お月見縁台」を設置し、邦楽の演奏鑑賞や抹茶を一服しながら中秋の名月楽しんでもらうイベント「御殿のお月見会」を行う。茶屋やマツなど庭園の各所をライトアップするほか、園路や昆明池周囲にはろうそくを設置し、足元を照らし誘導するなど幻想的な演出をする予定となっている。

同町によると、「楽山園由来記」に、梅の茶屋が建つ小高い築山「月待岡」からの眺めを「月夜の風光はもっとも明媚なり」と記述されている。梅の茶屋は別名を清友亭と呼び、「歴代藩主は大切な友を招き、月見を楽しんだと考えられる」という。
会を開く狙いについては、「楽山園の歴史を踏まえ、日本の伝統文化や季節感を大切にし、町の貴重な歴史遺産を後世に引き継ぐため、より多くの町民が文化財の保存にかかわる機会を提供したいと考えている」(同町)としている。
このほか、水戸市の偕楽園では30日、「中秋の名月鑑賞会 月夜のピクニック」が開催される。すでに萩のライトアップなどが楽しめる夜間特別開園を実施しているが、30日の「月見の会」では提灯づくり体験や茨城大学茶道部による野点茶会、見晴広場では天体観測も開かれる。
東京・池袋の「サンシャイン60展望台 てんぼうパーク」では29日、「中秋の名月」観賞会が開かれる。月をモニターへ映し出して解説。月のクレーターなど肉眼では確認できない細部を大画面で観察できるようにする。実際に天体望遠鏡をのぞき、自分の目でも中秋の名月が見ることも可能だ。都内では、東京ガーデンテラス紀尾井町(千代田区)の「空の広場」でも、29日に観察会が開かれる。人工芝に寝転びながら星空が鑑賞できるほか、リラックスチェアも用意されるという。