
美人画を得意とし、大正時代に活躍した日本画家、竹久夢二の作品を展示する回顧展「竹久夢二のすべて」が福田美術館(京都市右京区)で開催されている。来年に生誕140年、没後90年を迎える夢二が生涯をかけて作り上げた作品約230点を展示している。10月9日まで。
夢二の描く美人画は「夢二式美人」と称され、長身で華奢(きゃしゃ)な女性をしなやかな曲線で叙情的に描く。大正4年ごろに描かれた「木によれる女」では、物憂げな表情の女が木に寄りかかる姿をはかなく、奥ゆかしげに描いており、夢二の美人画の特徴を色濃く表現した作品といえる。
キリスト教徒であった夢二は南蛮情緒が残る長崎を大正7年に訪問。長崎滞在時に身を寄せた南蛮美術の収集家、永見徳太郎にお礼として送った作品「長崎十二景」では、港町や洋館など異国情緒あふれる長崎の風景と女性の姿を水彩の透明感のある色彩で精密に描いた。
日本画家であるとともに、小説家やデザイナーとしての一面も持ち合わせていた夢二。自ら筆を執った小説の挿絵や楽譜の表紙、少女雑誌の表紙原画などは当時の大衆文化に大きな影響を与えた。現在のグラフィックデザインの先駆けともいえる作品も楽しむことができる。
学芸員の森田佑弥さん(26)は「美人画だけでなく、大衆文化にも影響を与えた夢二の作品は美術を知らない人でも親しみを持って楽しむことができる。節目の年を前に、夢二の魅力を再発見してもらいたい」と話している。
午前10時~午後5時(午後4時半最終受け付け)。入館料が必要。(木下倫太朗)