
日本銀行は21、22日に金融政策決定会合を開催する。前回の7月会合で、長期金利を0%程度に誘導する長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用の柔軟化を図ったが、市場や経済への政策修正の影響を点検する。会合後の記者会見で、植田和男総裁が大規模な金融緩和策の柱でもある「マイナス金利政策」の解除など出口について、どのような発言をするのか注目される。
日銀は前回会合で、YCCの長期金利の上限を0・5%から1%に引き上げた。それまでは0・5%を上回った場合は無制限に国債を買い入れて金利を抑制していた。
0・5%の水準で厳格に抑えることで債券市場の機能にゆがみが生じる恐れもあり、上限の引き上げで改善を図った。
長期金利は0・7%程度で推移しており、「想定内の動き」(日銀関係者)にある。このため、次回会合は現行の政策を維持するとの見方が市場に広がっている。
むしろ、会合後の記者会見での植田総裁の発言に注目が集まっている。
9日付の読売新聞のインタビューで、植田総裁は賃金上昇を伴う持続的な物価上昇に確信が持てた段階になれば、マイナス金利政策の解除を含めた色々な選択肢があるとの考えを明かした。
さらに年末までに来春の賃上げが確実だと思える情報やデータが出そろう可能性はゼロではないとも発言した。
明治安田総合研究所の小玉祐一チーフエコノミストは「金融政策の早期正常化に向け、一歩踏み込んだ発言と受け止めることができる」とした上で「早ければ、年明けにもYCCやマイナス金利の解除が議論の俎上に載る可能性が高まった」との見方をする。
一方、原油高や円安進行で、さらに物価が上昇する可能性もある。日銀が物価上昇を抑制するために、年内にマイナス金利政策の解除やYCCの撤廃など金融引き締めに転じるとの見方も出ている。植田氏が何を語るのか、市場は固唾をのんで見守っている。(黄金崎元)