内閣改造で衆院選勝てるか 女性起用と論功行賞人事では難しい 高橋洋一

第2次岸田再改造内閣の初閣議後、記念撮影に臨む岸田文雄首相(前列中央)ら =13日午後、首相官邸

岸田文雄首相は13日に内閣改造と自民党役員人事を行った。起用された閣僚の顔ぶれは、留任が6人、再入閣が2人、初入閣が11人となっている。

女性の入閣は5人で、2001年の小泉純一郎内閣、14年の安倍晋三内閣と並んで、これまでで最も多い。

留任は、重要閣僚の鈴木俊一財務相、西村康稔経済産業相、松野博一官房長官、総裁選を争った高市早苗経済安全保障相、河野太郎デジタル相、公明党枠の斉藤鉄夫国土交通相だ。党の麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長とともに、政権の骨格は動かせなかった。

再入閣は上川陽子外相、新藤義孝経済再生相。筆者はここが改造内閣のポイントだと思う。将来の首相候補で同じ岸田派の林芳正氏に代えて、やはり岸田派の上川氏を充てた。女性閣僚5人で過去最高タイを狙ったのではないか。新藤氏は、首相肝いりのLGBT法の国会成立での論功行賞だろう。

初入閣は、鈴木淳司総務相(衆院、当選6回)、小泉龍司法相(衆院、当選7回)、盛山正仁文部科学相(衆院、当選5回)、武見敬三厚生労働相(参院、当選5回)、宮下一郎農水相(衆院、当選6回)、伊藤信太郎環境相(衆院、当選7回)、木原稔防衛相(衆院、当選5回)、土屋品子復興相(衆院、当選8回)、松村祥史国家公安委員長(参院、当選4回)、加藤鮎子こども政策相(衆院、当選3回)、自見英子地方創生相(参院、当選2回)だ。

衆院は当選5回、参院は3回以上が「入閣待機組」といわれるが、11人の初入閣者のうち9人は待機組からだ。

待機組以外からの抜擢は、加藤氏、自見氏の2人の女性が該当する。ここでも女性がキーワードだ。

待機組は自民党内に70人ほどいるが、今回でもその7分の1しか処遇できないので、残りの7分の6の人には不満が残る。これが、「内閣改造をすればするほど、政権の力は弱くなる」といわれるゆえんだ。

一方、「解散をすればするほど政権の力は強くなる」ともいわれる。それは、解散をして衆院選に勝った政権をいうのであるから、同義反復で当然のことだ。衆院選に勝つためには、内閣改造での党内の不満を最小限にしつつ、サプライズが必要だ。このため、抜擢しやすい女性を増やすという戦略になる。

今回の岸田改造内閣も小泉政権と安倍政権にならっている。しかし、両政権が強かったのは国政選挙に負けなかったからだ。岸田政権は、発足直後の21年の衆院選の勝利はご祝儀だったといえる。22年の参院選は負けなかったが、本格的な衆院選の勝利はまだない。

待機組からサプライズも可能だった。衆院6回当選で積極財政の城内実氏や新時代技術の平将明氏を入閣させるという手もあった。「財務省ベッタリ」との批判を避け、デジタル政策を加速させるという好印象が期待できただろう。

国民民主党の玉木雄一郎代表を入閣させるくらいの荒療治でもないと、なかなか政権支持率を劇的に上昇させるのは難しいのではないか。

(元内閣参事官・嘉悦大教授)

高橋洋一「日本の解き方」(zakzak)